寒さの厳しい日が続きますが、皆様お変わりございませんか。
みやこのじょう児童学園には、「モンテッソーリ教育」と「知能算数教室」という、2つの大きな教育の柱があります。
この日は、柱のひとつである「知能算数教室」の公開授業――参観日が行われました。
「知能算数教室」は高知県に本部がある、「積み木のにっしん」が考案したもので、今回は福岡直営校の室長先生である、浜田先生をお招きして、特別に授業を行っていただきました。
「知能算数教室」は独自の積み木を使用した「知能教室」と、積み木を利用し視覚的に分かりやすく親しみやすい「算数教室」に分かれています。
積み木を使った「知能教室」は1歳から始められます。
当園の1歳児グループである、ももグループから年齢別に40分ずつ、授業が行われました。
正面のホワイトボードを基準に、コの字に並べられた机には、たくさんの積み木が置かれています。
保護者の方が見守る中、ももグループさんが担任の先生たちに連れられて、よちよちとてとてホールに入ってきました。
授業の最初は、園長先生と浜田先生のお話が続きます。
山のような積み木の前、小さい椅子に座ったももグループさんたちは、いつもと違う環境にどこか不安そうな顔をしており、保育士の先生にしがみついている子や泣いている子がちらほらいました。
しかし、浜田先生が「手はあたま」と言うと、ほとんどの子が反射的に手を頭に置き、
「今から、積み木をピッタンこするよ!よーい、はじめ!」
の掛け声で、ちらほらと積み木に手を伸ばし始めました。
詳しい授業の内容はお伝え出来ませんが、みんな積み木は好きなようで、徐々に積み木を手に取って枠内にはめていきます。
1歳児さんのグループですが、浜田先生の指示を理解している子もおり、そういう子はちゃくちゃくと課題をこなしていきます。
ですが、指示通りに進める子はまだまだ少なく、ほとんどは積み木を決められた枠内に、自由につめていきます。
正解か不正解かで問えば、不正解です。
ですが、浜田先生は否定するような言動は一切見せず、
「青色が好きなんだね」「いい模様ができたね」「きれいに同じ形で揃えたね」
など、前向きな声掛けをしていきます。
さらに、迷っている素振りがある子や、動きが止まっている子には、
「赤色はどっち?」「この積み木をいれるのにはどうしたらいいかな?」
など、次の行動を促すためのアドバイスをしていきます。
当園の知能算数教室の先生たちも園児たちを見守る中、浜田先生は保護者の方々へ、様々な解説もしていきます。
積み木の選び方から見る、得意不得意の傾向。
同じ色や形で几帳面にそろえた作品と、カラフルにランダムにつめた作品の比較。
積み木の持ち方、つめ方からみえる手や指の発達の度合いなど。
そういった解説をしていきながら、一つ目の課題がスムーズにできているな、と判断できた子には、もう一段階上の課題を提示します。
ですが、浜田先生は課題の説明を全部はしません。
積み木のつめ方のパターンが分かるように数個の積み木を置いただけで、「はい、どうぞ」と子どもたちに渡します。
あとは子どもたちの想像に任せ、それによって「自分で考える力」を育てているそうです。
たとえ間違えていたとしても、決して否定しません。
「いい考え方だね。じゃあ、これはどうかな?」
とさりげなく子どもたちの思考を正解の方へ向け、あとは子どもたちに任せます。
積み木の渡し方もひと工夫されていました。
わざと少し遠くに積み木を見せて、子どもたちが自然に腕を伸ばして取れるようにします。
その動きが体のストレッチ――運動になり、「自分で物を取りに行く」という練習になるそうです。
そういった自宅でも簡単にできる、発達を促す働きかけ方も保護者の方々へ伝えていました。
およそ20分経った頃、「ストップ!」と浜田先生の掛け声と手を叩く音が響きました。
その掛け声に気づいて手を止める子もいますが、多くの子は積み木に集中して手を動かし続けます。
すると、授業の始まりと同じように「手はあたま」と声を掛けます。
さらに「ほっぺ」と続けるころには、ほとんどの子が手を止め、最後に「ピシャッ」と言う頃には、全員が手をお膝に乗せていました。
授業が始まったばかりの時はみんな緊張しており、はじめの挨拶では固まっていましたが、終わりの挨拶では表情も和らぎ、ぺこりと頭を下げる子も何人かみられました。
保育士の先生にぎゅっとしがみついて、なかなか積み木を手に取らない子も数人いましたが、最後にはほとんどの子が積み木を握ることができました。
大好きな保護者の方から離れ、馴染みのない先生たちがいるいつもと違う場所の中、きちんとお椅子に座って積み木に取り組む姿。
家では見ることのできないその姿や成長した姿に、保護者の方も感心したことでしょう。
ももグループさんとその保護者の方々が退室すると、次は2歳児のたんぽぽグループさんたちが入室してきます。
浜田先生のお話の最中も、じっとお椅子に座っていたたんぽぽさん。
「よろしくお願いします」と浜田先生が言うと、「よろしくおねがいします!」と元気にお返事していました。
開始の合図と同時に、次々と積み木へ手をのばすたんぽぽさんたち。
浜田先生が保護者の方々へ、園児たちの取り組みの内容を説明していると、
「できました!」
と元気な声があがりました。
保護者の方への説明を中断して浜田先生が駆け寄り、
「できたね!」
とハイタッチします。
その子をきっかけに、次々に「できました!」の声が上がりました。
当園の知能算数の先生たちも、園児たちの声や手が上がるたびに園児たちへ駆け寄ります。
あまりにもたくさんの園児たちが同時に手をあげるため、先生たちの対応が追いついておらず、右手も左手もめいっぱい上げて一生懸命アピールしている子もいました。
浜田先生も保護者の方々への説明が終わると、園児たち一人一人の手元をのぞき込み、必要があれば声掛けやアドバイスをしていました。
課題の難易度の上がり方も速く、限られた時間で用意された4つほどの課題を全てこなしてしまう子もいました。
たんぽぽさんになると、ももグループの時にはなかった「見本と同じようにつくる」という課題に取り組む子が多くみられました。
机の前方と中央に置かれたいくつかの見本の中から、先生たちが選んだものと同じものをつくるという課題です。
見本は正面の離れているところに置いているため、必然的に手元と正面を交互に見ながらの活動になります。
実はこの動作、将来――小学生以上に上がったとき、黒板の内容を手元のノートに書き込むときの動きと同じになります。
小さい時からこの動作に慣れて、正面を見たときに少しでも多くの情報を整理して取り込む訓練をしていると、黒板の内容をノートに書き写す作業がスムーズにできるそうです。
課題ができると、浜田先生を含めた知能算数教室の先生たちが答え合わせをしてくれていましたが、もし不正解だった場合は見本と見比べさせていました。
どこが間違えているかは伝えません。
どこが間違っているのか、どう間違っているのか、見本と同じようになるにはどうしたらいいのか、自分で考えさせます。
一見、厳しいようにも見えますが、これも「自分で考える力」を養うためです。
ももグループの時はサポートに徹していた先生たちですが、答え合わせや新しい課題の受け渡しに忙しなく動き回っていました。
あっという間に積み木の時間は終わりを迎え、子どもたちは浜田先生の合図できちんと手を止めます。
実は、このたんぽぽさんたちが1歳児だったとき、去年の公開授業の時は大勢の園児たちが大泣きして、授業がなかなか進まなかったそうです。
浜田先生はそのことを覚えてくださっており、
「すごい!この一年でたくさん成長したんだね!」
と驚いていらっしゃいました。
この一年で大きく成長したたんぽぽさんたちは、最後の挨拶も元気に言えていました。
筆者が未満児さんたちの公開授業の様子を見ていて印象に残ったのは、子どもたちの表情です。
「できました!」
と笑顔で手をあげて、先生とハイタッチをするときの達成感があふれるキラキラした笑顔。
「こう積み木を置いたら、どうなるかな?」
と浜田先生に問題を出され、眉をひそめて唇をとんがらせて考えている、真剣な姿。
保護者の方々も、ご家庭では見ることのできない姿をたくさん見ることができたのではないでしょうか。
各クラスの後には、浜田先生から保護者の方へ、10分ほどお話がありました。
子どもの成長は早いものですが、特に年齢が小さくなればなるほど、その成長は大きいものです。
その成長をプラスの方向へ向け、よどみないものにするためには、周りの大人からの声掛けが重要になってきます。
成長著しい未満児さんたちですが、個人の成長の差がより大きく感じるのもこの頃です。
「周りの子はもうできるのに、うちの子だけできない」
ついつい周りの子と比べて、一喜一憂してしまいがちです。
浜田先生は「自分のお子さんを他人と比較することはやめましょう」、そう保護者の方へ伝えました。
そして、「比べるのは、過去のお子さんとだけです」そう続けました。
そうすることで、子どもの成長をよりはっきりと感じることができ、保護者の方の不安や焦りも軽減することができます。
その成長を子ども自身に伝えることも大切だそうです。
「昨日はできなかったのに、今日はできたね」
「ここを工夫したんだね。もっとよくなってる」
できるだけ具体的に、そして客観的に伝えることがポイントです。
まだ、大人の言葉を全部は理解できない月齢、年齢でも、「褒められたこと」や「大好きな保護者の方が喜んでいる」ことは分かります。
それらプラスの感情や言葉が、子どものやる気につながり、成長のサイクルを好循環させることができるそうです。
「周りと比較しない」ということはとても難しく、ついつい気にしてしまいますが、もしもご自分のお子さんと周りの子どもを比べてしまいそうになったときは、一息ついて、頭の中から一度考えを追い出して、「前のこの子はどうだったかな」と、過去のお子さんと今のお子さんを見比べてみてください。
「自分の頭で考える力」を大切にしている、積み木のにっしんの知能算数教室。
みやこのじょう児童学園でも、積み木を通じて「自分で考える力」と「最後までやり抜く力」の基礎を育んでいければと思います。
今回は積み木のにっしん、福岡直営校の主任である、浜田先生にお越しいただきました。
お忙しい中、当園へご足労いただき、そしてご教授いただき、ありがとうございました。
この場をお借りして、感謝申し上げます。
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