立春とは名ばかりの厳しい寒さが続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
2月2日は立春の前日ということで、節分でしたね。(通常は2月3日が節分ですが、2025年は2月2日でした)
2日の夜に鬼がやってきたご家庭もあったことと思いますが、1日遅れて、みやこのじょう児童学園にも鬼がやってきました。
子どもたちも何かを感じ取っていたのでしょうか。
この日は、いつも笑顔で登園してくる子どもたちの顔が曇っており、緊張したような表情をしている子もいました。
「今日は鬼がくるよ!」
そう先生たちに告げられた子どもたちは、この日のために作成した鬼の被り物を身に着け、小さなかごに豆を入れて、新聞紙等を投げて、鬼退治の練習をしていました。
「おにはそとー、ふくはうちー」
いつも弾んで聞こえる歌声も、硬くこわばったような歌声に聞こえました。
そして、10時30分。
園内放送で童謡の「まめまき」が流れ出すと――
ガンガン!バンバン!
大きな音とともに、赤鬼と青鬼がやってきました。
手に持った武器を振り回し、どすん、どすんと大股で歩き、教室へ近づいていきます。
最初に鬼を目にしたのは、さくらグループB(年少)さんでした。
みんなで集まって鬼を待ち構えていたさくらさんたちは、赤鬼と青鬼を目にした瞬間、恐怖で目を見開き、きゅっと身を寄せ合ってますます小さな塊になりました。
鬼が教室の扉をがらりと開けます。
「きゃー!」
鬼が手に持っていた武器で、バンバン!と大きな音を出すと、子どもたちは散り散りになって逃げだしました。
手に持った豆を投げることも忘れ、ある子は涙を流しながら、またある子は顔を恐怖で強張らせながら逃げ回ります。
そのうち、1人の子が勇気を出し、
「おにはそとー!」
と必死の形相で豆を投げました。
豆を当てられた鬼はどてっと倒れると、すごすごとさくらさんの教室を後にしました。
次に鬼が向かったのは、未満児さんたちの教室です。
赤鬼がちゅうりっぷ(0歳児)さんの扉を開けると、目の前に立っていた小さな男の子が泣き出しました。
それをきっかけに、小さなお友達が一斉に泣き出します。
体が恐怖で動かないのか、棒立ちのまま大泣きする男の子の前に赤鬼はしゃがみ込み、顔を覗き込むと、何もしないまま教室を後にしました。
もも(1歳児)さんとたんぽぽ(2歳児)さんたちの教室を覗きに行くと、ちょうど子どもたちが鬼から逃げ回っている最中でした。
「おにをやっつけるの!」
鬼が来る前、そう言いながら笑顔で丸めた新聞紙を投げていた女の子も、涙を流しながら、先ほどまで練習していたことをすっかり忘れた様子で逃げ回っていました。
中には、力持ちの赤鬼に捕まってしまった子もいました。
「いやー!」
と泣きながら暴れますが、鬼の腕から逃げることはできません。
そのまま自分の教室から鬼が出てしまい、
「どこかへ連れていかれる!」
そう思った男の子の顔からは、絶望が垣間見えました。(その子は隣の教室でそっと下ろされ、筆者が抱っこして教室へ連れ帰りました)
さくらグループBさん以外の以上児さんたちの教室にも、鬼が向かいます。
さくらグループBさん、ゆり(年中)グループAさんとBさん、それぞれの教室で鬼たちが大暴れします。
青鬼の持つ、プラスチックのおもちゃのバットで背中をちょんちょんと突かれ、必死の形相で逃げだす子、赤鬼に捕まって大泣きする子。
「おにはそと~♪ふくはうち~♪」
童謡「まめまき」の明るい歌声が響く中、阿鼻叫喚の様子がしばらく続きました。
片方の鬼が教室を出ていって、ほっとするのもつかの間、しばらくするともう片方の鬼がやってきます。
2体の鬼が行ったり来たりするので、きっと子どもたちは生きた心地がしなかったことでしょう。
鬼が教室を行ったり来たりする中で、一度、ゆりグループAさんが入り口で見守る先生たちの腕をすり抜け、教室を飛び出し、ホールへ駆け込む様子も見られました。
さて、ゆりグループAさんたちが教室へ戻った後にホールをのぞき込むと、ライオンのたてがみのような被り物を身に着けたすみれさんたちが、びくっとしながらこちらを振り向きました。
「大丈夫、鬼じゃないよ」
そう声をかけると、すみれさんの肩から緊張が少し抜けました。
「さっき、ゆりさんたちがきたよ」
「びっくりした」
「おにもくる?」
口々に報告してくれるすみれさんたちと話していると、扉の所から気配がし、そこから赤鬼が姿を現しました。
赤鬼を目にした瞬間、すみれさんたちは悲鳴を上げ、一斉に逃げ始めます。
「まめをなげればいいんでしょ」
先ほど、そう話してくれた男の子もみんなと一緒に、一目散に逃げだしました。
来年小学生のすみれグループさんの脚の速さに翻弄されながらも、赤鬼は子どもたちを追いかけ、ときには集団からはぐれた女の子を隅に追い詰めて怖がらせ、またときには逃げ遅れた男の子を捕まえます。
「いい子にします!いい子にします!」
先生の腕にしがみつき、鬼に向かって必死に叫び続ける男の子もいました。
やがて、子どもたちを追いかけ続けていた赤鬼がバテ始めました。
弱り始めた赤鬼の姿に子どもたちの緊張が少し和らぎだしたその時、ホールの扉から青鬼が姿を見せました。
バンバン!
大きな音が扉の近くでなり、入り口付近にいた子は慌ててホールの奥へ逃げ出しました。
2体の鬼に追いかけられ、すみれさんたちはさぞや怖かったことでしょう。
鬼たちにさんざん追いかけられた園児たちですが、最後には鬼たちと一緒に記念写真を撮りました。
赤鬼青鬼と和解したのか、ほとんどの子どもたちはにこにこ笑顔で写真を撮っていましたが、中にはまだ警戒が解け切っていない、強張った表情の子もみられました。
節分の豆まきは、季節の変わり目に起こりやすい病気や災害などを鬼に見立てて、それを追い払う儀式――追儺(ついな)が由来だそうです。
これからも寒い日々は続き、春へ向けて、寒暖差の激しい日々もやってくることと思います。
みやこのじょう児童学園の園児たちが大きな病気や怪我がなく、健やかに過ごせますよう。
きっと、やって来てくれた赤鬼と青鬼もみんなの健康を願っていることでしょう。